ソレアとは?フラメンコに愛されたメロディー

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恋愛から人生訓まで、フラメンコに愛されたメロディー…ソレアってどんな曲?!

今回は、フラメンコの母とも呼ばれて
とても大切にされている曲種  Soleá ソレア を紹介します。

このソレア、この前紹介した「アレグリアス」と並んで、
特にフラメンコの踊りの舞台では欠かせない存在です。

アレグリアスが踊りの花形だとしたら、
このソレアはフラメンコのドラマチックな部分が凝縮された曲目。

アレグリアスが真っ赤や目がさめるようなオレンジだとしたら、
ソレアは深い紫。重厚さの中にも妖しさ、色気を感じさせます。

ギターの何とも言えないメロディーライン、
歌の旋律全てがとてもエキゾチックな響きを持っていて、

「フラメンコを聴いているなぁ、、、」と浸ってしまうかもしれません。

そして踊りの場合、
後半にはフラメンコで最も難しく魅力的な
曲目『Bulería ブレリア』へと展開するのが普通でまさに見所満載な曲です。

さて、その印象的なソレアの音。

解説本では『ミの旋法』などと書かれています。

『ミの旋法』。。。。文字で見てもさっぱり分かりませんよね。

百聞は一聴にしかず、を承知でなんとか言葉で表現するなら、
「寂しさ、不安と懐かしさ」が混ざったような 不思議な音色。

ところがこの「言葉にするのが難しい音」は、

一度でもスペイン、特にアンダルシアに降り立つと

「なるほど!この街にしてあの旋律なんだな」と深く納得してしまう何かを秘めています。

ギターホールから解き放たれたソレアの音色が、
アンダルシアの路地の乾いた空気の中に響くのを聴いた時、

同じメロディーの中にそれまで感じなかった『美しさ』があることに気づいて、
『ああ、今自分はフラメンコが生まれた土地にいるんだな』と妙に感動したのを覚えています。

歌の歌詞のスペイン語なんか全くわからなくても、
このギターの調べだけでもアンダルシアを感じさせてしまう魅力。

これを生み出した人たち、土地に、オレ!!!

さて、このあたりで『ソレア』という名前の意味について少しお話ししましょう。

ソレアについて

名前の由来は

①「Soledad 孤独」というスペイン語のアンダルシア訛りだ、とか
※アンダルシアでは『d』を発音しないので、「Sole(d)a(d)」→「Solea」となります。

いやいや

②この曲を見事に歌い上げた実在の歌い手 SOLEDAD(結局綴りは一緒ですが。)
からきている、とかいまいちはっきりしてはいません。

また、

③ Soleares ソレアーレスなんて呼ばれる事がありますが、
これはSoledades ( ①の複数形 ) のヒターノ風の訛りらしいです。

と、フラメンコにありがちですが、名前の由来だけでも諸説あります。

どれもそれっぽいなぁ、と大らかに理解するのがフラメンコ的かも (о´∀`о)

でも、ここでよく誤解されるんですが、
このソレアの内容は決して『孤独』や『悲しさ』のみをテーマにしていないんです!!

そんなに難しく考えずに、歌詞の世界を見てみると、、
その内容は恋愛から人生の教えまで幅広いテーマが扱われます。

面白いのは、時代や民族の違いがはっきり感じられる歌詞がある一方で、
人間の普遍的な部分、感情を歌っているものも数多くあること。

歌詞の長さによって4行詩のソレア ラルガや 、
3行詩のソレア コルタ、ソレアリージャという風に分類されていますが、

何れにしてもこの短い詩の中で情景や感情が表現されています。

しかも!

受け取る側にストーリーを想像する余地があるところが
フラメンコの歌詞、特にソレアのすごいところで、
それが今を生きるフラメンコ達にも愛される理由なのかな、と思います。

ソレアの歌詞は膨大にあるので、

ここでは本当にごくご〜く1部しか紹介できませんが、、、

①「A quien le cuento yo
la fatiga que estoy pasando
se la voy a contar a la tierra
cuando me estén enterrando

訳:この辛さを誰に語ろうか?
自分が土に埋葬される時に、
自分にかぶせられる土にそれを話そう。」

土葬文化ならではの表現で、ヒターノたちの厳しい生活がうかがえます。
自分はこの歌詞を見て、孤独な男が辛い日々から解放されるのを望む姿を想像してしまいました。

②「el sueño yo no cogía
porque en mi camita yo me acostao
soñe de que te perdía

訳:全く眠れなかった。
うっかり寝てしまった時に君を失う夢を見てしまったから。。」

恋愛のことを歌った歌詞。
メロディーはかなり激しくて、
歌を聴いただけではとてもこんな内容が歌われているとは想像できないと思います。
よく情熱的と言われますが、スペイン人達の表現はとてもロマンチックです。

③「Por qué no te levantas tempranito
que al castillito quiero ir
me han dicho que con el alba
se oye el eco de Joaquín el de la Paula

訳:早く起きて城壁のところに行こう!
みんなが言うには、日が昇る頃 ホアキン・エル・デ・ラ・パウラの声が聴こえるっていうから。」

※Joaquín el de la Paula (1875-1933) ソレアを得意とした伝説的な歌い手。

ソレアデアルカラというスタイルの名手の事を讃えた歌詞で、
彼のことを伝承する歌でもあり、街の情景を想像させるとても有名な歌詞。

この歌詞は確か、ホアキンが亡くなった後に作られた歌詞だったはずですが、

フラメンコの世界では演奏は夜中に始まって、
終わるのは朝方や、一度盛り上がれば翌日の昼過ぎにまで及ぶことは普通のことなので、

それを踏まえてこの歌詞を読むと、
ホアキンが生きていたとしても、亡くなっていたとしても
それぞれにリアルな風景が思い浮かぶなぁ、、なんて感心してしまいます。

現在、歌い継がれている中で一番古いソレアは、
19世紀前半にセビージャのトゥリアーナ (Sevilla, Triana)地区で生まれたとされていて、
そこからセビージャとカディス(Cadiz)の2つの県に広がって、
いくつかの街では独自のスタイルが確立されました。

その代表的な街には、

さっき歌詞の紹介で出てきたホアキンの故郷セビージャ近郊の街、
アルカラ・デ・グアダイラ(Alcala de Guadaira)や、ウトレーラ(Utrera)

そして、カディス県のヘレス・デ・ラ・フロンテーラ (Jerez de la Frontera)があります。

ちょっとマニアックですが、、
地図を片手に独自のソレアのスタイルが生まれた街を見ると、、

トゥリアーナ 〜 アルカラ間が17km。アルカラ 〜 ウトレーラ間は25km。
離れているトゥリアーナ 〜 ヘレス間でも92km。

スペイン全土の地図で見れば、ほんの一角のこのエリアで
一つの原型の歌が時間をかけてバリエーション豊かに発展しました。

その中でたくさんの人達に愛され歌い継がれて今にまで残っている
歌、そしてギターのメロディー。

まだ携帯も録音機もましてやSNSもない時代、

フラメンコの歌は歌い手の記憶を頼りに、
人が行き来する距離の中で徐々に広がっていきました。

ロバの背中に荷を積んだ行商の人達が、歌いながら街から街へ。

その街のバルで飲んで歌えば、
その歌を横で聞いていた子供がそれを覚えて、、、とか 妄想スタートです 笑

時には脚色が加えられたり、もちろん人間だからたまに記憶違いなんかもありながら。

さて、こんな風にそれぞれの歌詞やアーティストのエピソードを紹介していったら、
分かっていることだけでも、本何冊分にもなってしまうのでこのぐらいにしておきますが、、(^_^;)

今日は『ソレア』を紹介しながらフラメンコ音楽が、
アンダルシアの、特にヒターノ達の生活のありのままの1シーンを切り取っていて、
それが世代や場所を超えて現在にまで受け継がれているという事を感じてもらえたんではないかと思います。

ただ『過去を繰り返すだけ』ではないフラメンコ。

現在のフラメンコは未来の人達にどんな風に伝わっていくんでしょうね?